もし、出口のない八方塞がりな状況にいると感じるなら - 『スローターハウス5』(カート・ヴォネガット・ジュニア)
もし、自分は今、出口のない八方塞がりな状況にいると感じているとしたら。
著者のカート・ヴォネガット・ジュニアは兵役で派遣されたドイツで捕虜になり、ドレスデンで連合軍による無差別爆撃に遭遇しました。彼はこの悲惨な体験を本にしようとしたが、なかなかかたちにできなかったといいます。
彼は、主人公ビリー・ピルグリムがトラルファマドール星人に誘拐されて、自分の生涯の自分の生涯の過去と未来を行き来する時間旅行者になってしまうというSF的な設定を借りて、やっと自身の悲惨な体験を語ることができました。
作中でビリー・ピルグリムはかなり悲惨な目に会うのですが、「あらゆる瞬間は、過去、現在、未来を問わず常に存在してきたし、常に存在しつづける」という達観した境地で全てを受け入れます。これは、自身の悲惨な体験に向き合いそれを言葉に変えようと試行錯誤してきたカート・ヴォネガットが達した境地にほかなりません。
自分は今、出口のない八方塞がりな状況にいると感じている人がいるとしたら、カート・ヴォネガットが本作を書くことで救いを得たように、本作を読むことで救いを得ることができると信じます。
『スローターハウス5』を読んでみようと思ったのは、『ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて』(長谷川町蔵、山崎まどか)の中で「(アメリカ)学園映画ではサリンジャーよりも圧倒的にカート・ヴォネガット、『ライ麦畑』より『スローターハウス5』への支持が強い」という文章を読んだからでした。この文章は次の一文で終わります。「この状況がずっと続くのではなく、人生のある一点なのだということに希望を見出し、高校生活を乗り切った子どもたちが学園映画の作り手となるのである」。
今は辛くてもそれが永遠に続くなんて思わないで。
プーティーウィッ?