『終点のあの子』柚木麻子

20160414-01

アッコちゃんシリーズでお馴染みの柚木麻子さんのデビュー作です。

10代の頃は、家と学校、家族とクラスメートや部活仲間、塾の友だちが世界のすべてだと思いこんでいて、その狭い世界の中で人と比べて自分はまともじゃないんじゃないかと考えて不安になったりとか、こんなにのんびりと田舎の高校生をしていていいのだろうかと突発的に焦った気持ちになったりしていました。

振り返ってみると、なぜあの頃、あんなにいろいろなことに深刻に悩むことができたのか不思議です。今も悩みはあるし、それこそ悩みが途切れたためしなどないのですが。
10代の頃の自分と今の自分とを比べると、ずーずーしくなったもんだなーと思います。

人はこうして、老いていくのですね。
モリー・リングウォルド曰く、「大人になったら心は死ぬのよ」。

わたしは、アメリカ学園物と呼ばれるような、10代の子たちを主人公にした映画が大好きです。映画の中のティーンの子たちが些細なことでこの世の終わりみたいに真剣に悩んでいるのを見ると、子どもだなぁと微笑ましく感じると同時に、むかしの方がそれだけ純粋だったのかもと思ったりします。…すっかり汚れてしまいました。『終点のあの子』を読んでいると、そんなティーン・ムーヴィーを観ているときのような気持ちにさせてくれます。高校生の頃の自分を思い出したり、歳をとって失くしたものについて考えてみたりします。

4つの作品からなる連作短篇で、わたしが特に好きなのは、『ふたりでいるのに無言で読書』。普段は別のグループに属している女の子たちが、ひょんなことから交流する話で、映画『ブレックファスト・クラブ』を思い浮かべながら読みました。

主に小田急線沿線が舞台なので、小田急線を使っている人は細かなディテールを楽しみながら読むことができます。

最後に、この作品を読んでいて連想したティーン・ムーヴィーを挙げます。

・『クルーレス』
・『ローラー・ガールズ・ダイアリー』
・『ミーン・ガールズ
・『17歳の肖像』(←アメリカではなく、イギリスが舞台の映画ですが)
・『ゴースト・ワールド』
・『ブレックファスト・クラブ』