『この闇と光』服部まゆみ
予備知識無しで読んだ方が良い本というものがありますが、『この闇と光』(服部まゆみ)はそんな一冊です。
未読の人には、極力、事前情報なしで読んで欲しいので、小説のあらすじについてここで触れることはできません。ただ言えることは、読書を通して自分の世界が拡張されていくという誰もが一度は味わったことがある体験を追体験させてくれるということ。幻想的なゴシックミステリーというだけでなく、世界というものが自分のまわりにどういうふうにして立ち現われてくれるのか見せてくれるということ。読書についての小説であること。そして、読み終わったら、もう一度はじめから読み返したくなる小説であるということは言えるでしょう。
わたしは、この小説を読んでヘッセの『デミアン』を読んでみたくなりました。
ひとつの本から別の本へとリレーするように読みたい本が繋がっていくのも、読書の愉しみのひとつですね。